『光車よ、まわれ!』 天沢退次郎 著。
私の創作に関するイメージは、かなりメルヘン、というか、ファンタジーな世界からやってくる。
高校を卒業するまで、小説、と呼ばれる本には、殆ど手を付けていない。
そのかわり、本を読めるようになった頃から、ずっと、児童文学に浸っていた。
ムーミンに、ナルニア国物語に、アーサー王のお話。海底二万海里に、無人島で生活する話の本、ロビンフッド。はてしない物語に、モモ、ゲド戦記…
もちろん、思い出せない本も沢山あるのだが、お気に入りの本を何度も繰り返して読む事が多い。
ふと肌で季節を感じたとき、本の中のとある世界が、無償に恋しくなる。そしてまた図書館でその本を借りて、懐かしいあの世界に遊びにいく、という儀式みたいなものなのだ。
その中でも、雨の気配を感じたとき、ぎゅうと世界を閉鎖的な空間に変える雨模様の日、その度に何度も読みたくなる本がある。
「光車よ、まわれ!」
作者の天沢退二郎さんは、『日本の詩人、仏文学者、国文学者、児童文学作家、翻訳家。宮沢賢治研究の第一人者』だそうだ。
その人がかいた、児童文学のうちの一つ。「オレンジ党」シリーズも有名なのだが(それももちろん大好きだ)私の「雨」にかんする感性を磨いてくれたのは、まちがいなくこの本だろう。
物語は、全体的にダークトーン。
主人公は小学生達。
水たまりから現れるようになった黒い手。
そこからどんどん、主人公の周りには、雨と、『水の悪魔』、緑色の服に身を包む得体の知れない大人達が増え始める。
その怪異を打ち破る為にも、「光車」を探すのだ。
このあらすじだと、簡単な勧善懲悪のストーリーに見えるのだが、なんども遊びにいきたくなるような(恐いもの見たさで)、世界観が確立している。
さすが詩人さんだけあって、活字から色やにおいを浮かび上がらせる事が、天才的である。
ちなみにこの本は、図書館で借りるか、ネットで注文するかでないと手に入らない。
さらにちなみに、天沢退二郎さんは、アニメ映画『銀河鉄道の夜』にも関係しているようで、私はそれを知らずにあの映画が大好きだった。
なるほど、あの映画のトラウマになるようなダークトーンは、この「光車よ、まわれ!」と共通している部分があるのかもしれない。
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